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当方が愛するこもごもをランダム且つ気まぐれに電脳の海の片隅でひっそりご紹介。のはずが何か違う。

宇宙刑事シャイダー第29話<百面相だよ女刑事>(1984.10.12)

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この話は一番愛している(※1)ので、多分長くなる。
ヘスラー指揮官どののスリーピース背広とギャル軍団のお姉さま方の販売員制服ワンピースを五体投地で拝むための回(※2)。
いちいち全部カッコいい久保和彦氏のオンパレード(※3)。これだけ長時間、変装のまま行動した話は他にない。
至福のアニー七変化チェイスはBパート(※4)。本拠地複合商業施設(※5)に単身潜入のアニーをギャル軍団は取り逃がしてしまい、それを追うべく、ヘスラー指揮官どのも販売員の上司に身を窶して現場に合流してくる(※6)。
いきなり登場シーンからして眼福。背広で階段を駆け上がるそのさまは、知らん人が見たらただの男前が若干取り乱しているだけ。踊り場で進行方向をはっと見る様子がものすごい臨場感(※7)。
売場フロアでギャル1お姉さま率いる軍団と合流、アニー探索に入るのだが、久保氏と、名和慶子女史を先頭にフロアを闊歩するそのさまは嗚呼あたし生きてて良かったレベルの眼福度を叩き出す(※8)。
フロア通路中央で合流、そのまま直角に向きを変えて探索開始。この合流がまた良い。スピード感ハンパない。事前の打ち合わせあってこそのテンポなのは勿論だが、ギャル1お姉さま停止→ヘスラー指揮官どの合流及び足の踏み込み停止→お互いアイコンタクト→方向転換及び闊歩開始、のこの一連の流れが隙なく無駄なく美しい(※9)。
しかも、ここは売場フロア。フーマの悪行など露知らぬ善男善女が今まさにお買い物をなさっている 状況で、ことを荒立てて周囲にばれ、作戦に支障を来すのをよしとしない判断は当然と言え(※10)、それ故に、ヘスラー指揮官どのの下す射殺命令も対するギャル1お姉さまの返事も、トーンを落とした声音になっている。しかもやり取りはほぼ前を向いたまま。とことんリアルな作戦行動と言える(※11-1)(※11-2)。そこにほんの少しだけ、実は侵略者であるスパイスが効かされていて、闊歩しているその様子が、一糸乱れぬ軍隊のそれを彷彿とさせる美しさであることと、販売に身を置くものらしからぬ鋭い目配りから、視聴者は辛うじてこの一団が非日常に属する敵方だと思い出す(※12)のである。
この複合商業施設には舞台も併設。其処でアニーは藤娘に扮してひとさし舞い、追手を翻弄するのだが、その舞台袖から探索しているヘスラー指揮官どのがまた良い(※13)。このシーン、すべてほぼほぼナチュラルメイクなのに、その目付きを厳しくしているだけでああヘスラー指揮官どのだと分かる(※14)。ここまでだけでも、厳しい目付きの背広の男前とか、どんなご褒美かと言う映像であるが、舞台上のアニーが目線をやったがために寸でのところで気が付き、非常口で振り返るその顔がもう。36年経った今も忘れ得ぬ印象的シーンである。
藤娘アニーはバックヤード階段室に逃げ込み、其処で大ちゃんと合流。それを追う販売員一同。階段下でギャル軍団に指示を出すヘスラー指揮官どのの声がもう美声(※15)。リノリウムだと革靴は滑るらしく、隠れたアニーの眼下に文字通り滑り込んでくる(※16)のだが、その動きすら眼福。
そして施設一階、新婚カップル大ちゃん&アニーvsフーマ販売部の化かし合いは見事宇宙刑事サイドに軍配が上がるのだが、この時のカメラワークはアニーたちが逃げおおせると言うシーンであることから、ヘスラー指揮官どのたちを主に置いたものになっており、お陰で、油断なく目配りしながら大股で闊歩してくる久保氏のスタイルの良さを余すことなく堪能出来る(※17-1)。序でに、カメラ前に出る寸前、歩き出しのタイミングを計って居るだろう様子も見てとれ(※17-2)、製作現場の雰囲気を少しお裾分け頂いたようで楽しい。
この一連のチェイスシーン、本編としては2分そこそこの長さ。その2分がただひたすら素晴らしい。製作側のスピーディなカット割りや編集演出の腕と、久保氏の演技技量と恵まれたルックスの相乗効果で、追われるアニー、追うフーマの緊迫感が見事に出ている(※18)のである。リアタイ視聴していた身として、金メダル仕掛け人よりもこちらの話を強く記憶している(※19)のは、拙い理解力ながら、ヘスラー指揮官どのキャー素敵、だけではなくて、その辺の作り手の熱みたいなものを画面越しに嗅ぎとっていたのだろうと自画自賛してみる令和三年の初春である。

※1/今風に言うなら、この話しか勝たん。
※2/敢えて、そう断言したい。
※3/製作陣が当時何を狙って現場に臨んでいたのか是非とも聞いてみたい。いや勿論アニー主体の話なのは承知している。杉作J太郎氏もそう評論しておられるし、その通りなのは論を待たない。ただ、アニーを推すだけで良いなら、敵方の変装はお飾り風味で充分事足りるのであり、そうせずに惜しみ無くがっつりため息ものの演出と演技をぶっこんで来たと言うのは、何なんだろうなあ、と。単に贔屓目で推しを見ているだけか。
※4/例によって他の諸兄におかれては、詳しいレビューやデータは電脳の海よりサルベージされたい。
※5/今はなきららぽーと志木。
※6/策士足る所以。これが愛すべきガイラー将軍だと、激昂してそのまま乗り込んで全部台無しにする事例。決して栗原敏氏をDisっている訳ではないのでお許し願いたい。同じ脳筋系を起点としながら、キャラクターの育成方向にこれだけ明確な差が出たことを今更ながら驚嘆しているだけである。
※7/えっこの人わるもんなの?レベルの画面映え。七曲署とか勤務していそうである。
※8/このシーンの特写スチールなんかもしもあった日には、複数枚焼き増しかけたうえで神棚行きである。背広着た男前と、かっちりしたワンピースに身を包んだ綺麗どころが靴音高く闊歩。ただの目の保養。
※9/無論カメラマンの技量もあるが、動きに迷いがなく、きっちりフレームに収めてきている。方や文学座、方や劇団櫂。舞台やってるとこう言う見せ方も出来るのか。役者すげえ。
※10/だからこそ背広にワンピースなわけで。
※11-1/傍目には、綺麗どころ販売員を引き連れた男前上司が何か差し迫った事情で万引き犯かはたまたお偉いさんか捜していると言う構図。
※11-2/あのスピードで歩きながら、そのスピードに引っ張られずにかなり抑え目に<承知しました>と答えるギャル1お姉さまは地球外生命だと考えるのに凄い説得力を持つが、あれは特撮の音声がオールアフレコ故出来たこと。如何に芝居の経験値が高くとも、地球人と生まれたからには、身体特性は通常のそれに準ずる。実際、画面を見るに、現場ではお姉さまは<承知>とだけ答えている。歩く方に意識を向けてればそりゃそうなるよなあ、と変に納得。
※12/ここまでのリアリティとフィクションの鬩ぎ合いは、他の話ではなかなか見られない。
※13/非常口の緑の灯りで出来た陰翳に身をおき、身体を少し斜に構え、舞台や客席を視線のみ動かして目視、舞台上の藤娘を凝視したのち、あくまでも静かに目線と顎でギャルたちを促してその場を立ち去ろうとする。
※14/ステンドグラスメイクの下はいつもこう言う表情か、と納得する。如何にいつもが奇抜なメイクなのか分かる。
※15/ハンターキラー飯田道郎氏に似ていると言う電脳の海での意見あり。さもあらん。
※16/俯瞰カメラの位置に合わせて完璧に停めてきている。<捜せ!>と頭を振りながら指示を飛ばす様子がまたお素敵。要するに何やってもカッコいい。
※17-1/翻る背広の裾が様になっていることこの上なし。背広を着た男斯くあるべし。
※17-2/踏み出し一歩目がほんの少し、スロー。あの位置関係でしかもカメラ引きで撮って居る状況で、何も指令なく大ちゃんたちにタイミング合わせてくるのは地味に難易度が高いのである。但し、東映特撮現場は巨大ロボ召還音声が<カツ丼一丁!>な場所ではあるので、現場では監督から大音響で指示が飛んだ、かも知れない。なお、カツ丼一丁云々については、詳細はラポート刊<ショッカーO野の熱血ヒーロー日記>を参照されたい。
※18/ものすごい端的に言うと、この追跡劇はイオンモールとかキューズモールとかで繰り広げられてもおかしくない、そう思わせる現実味を帯びているのである。
※19/間違いなく一目惚れしたのは金メダル仕掛け人が端緒である。ただ、何も資料のない状態で久保氏のことを考える場合、必ず、この回の彼が真っ先に思い浮かぶ。